2015年10月17日土曜日

特色検査について③

柏陽高校平成27年特色検査問題。
前回からの続きです。

問4は国語の問題。
国語とはいえ、「貧困は作られる」「購買力平価ドル」など、苦手な人は大人でも読み取りに苦労しそうな課題。小論文の課題文のようだ。
どのように考えて解くかを考察するために、ここでは、問題の全文を載せます。

 (ア)『下線部⑴「二つの注意」とはどんなことか。それぞれ文末が「~こと。」
   (字数に含む)となるように下線部より前の内容を踏まえて、どちらも20字以
   上、30字以内で記述用紙に記入しなさい。その際、どちらにも「所得」「豊かさ」
   という二語を用いること。』

このように、ただ「説明せよ」よりは、条件が指定されている分だけ楽になっている。この指定された条件を余計なものだ、と思っている人はよほど実力があるか、そうでなければ損をしている人だ。
せっかく、わざわざ、高校が条件を入れて書きやすいように(現実問題として採点しやすいように)しているのだから、ありがたいと思おう。指定の条件はヒントでもあるのだから。
さて、実際に問題文本文がないと考えにくいし、柏陽の難易度を知るためにも、ここは引用文を載せます。以下が引用(問題文の一部)です。

(以下、引用始め)

・・・だが、このような計算に落とし穴があることはすぐわかるだろう。二つの注意が必要である。
 わたしは中国雲南省大理市の白族居住地域を訪ねたことがある。ここではGDPは一人当たり一日1ドルだが、農耕を基礎として、自給経済の上に民芸も盛んで、人びとは穏やかな暮らしを営み、どこの家にもカギがかかっていなかった。2003年にアカデミー・ドキュメンタリー賞を得たマイケル・ムーアは、アメリカのデトロイトでは人びとが家のドアに三重ものカギをかけているのに、対岸のカナダの町では誰も家にカギをかけていない事実を報告している。大理の白族居住地域の所得はカナダのそれの50分の1程度だが、暮らしの安全や平穏な生活という点ではカナダ並みの豊かさを享受しているのである。
  それと裏腹に、日本の場合には貧困ラインは一日1,670円(1人月5万円)で、三人家族で5,000円以下の収入で定職をもたない(定職をもつ場合には東京地域の最低賃金は一時間736円[2006年]なので、一日56,000円の収入を得ることになる)場合には生活保護の対象となり得る。
  1,700円というと、一日1ドルの十七倍の水準(アメリカもほぼ同様)だが、一日17ドルでも自分と家族の生活を支えることができないという問題が生じる。
  だから実際には各国がそれぞれ貧困ラインを設定して、公的扶助の対象を決めており、「一日1ドル」という画一的なレートで世界の貧困問題を議論することはあまりに大ざっぱだということになる。
 以上の⑴二つの注意を念頭に置いた上で・・・
(以上、引用終わり)

引用部分最終行の⑴が下線部である。見ていただければわかるように、引用部分の最初にも「二つの注意」があるから(同じ語句を探すのは基本テクニック)、この間にあることをまとめればよいことがわかる。
そして、どちらにも「所得」「豊かさ」という二語を用いなくてはならないので、答えは決まっているようなものだ。
・・・とはいえ、「所得」「豊かさ」という語句は1か所ずつしか使われていないので、後半はまとめるのに苦労するかもしれない。
ただ、ここまでがわからないようだと、この問題は捨てたほうがいいかもしれない。難しい。
そのかわり、英語を超中学生レベルまで勉強し、次の問5でほぼ満点を取ってほしい。
さて、実際にまとめてみよう。
自分の頭で考え・・・なんていうことは、よっぽど国語・小論文が得意でない限り、やめた方がいい。記述は、×にならなければいい。おおざっぱな理解は必要だが、あとはテクニックを使うべきだ。学校の課題のように時間が無限にあるならともかく、これは試験であり、時間はわずかしかない。では理解のために再度、引用する。

(以下、引用始め)
・・・を報告している。大理の白族居住地域の所得はカナダのそれの50分の1程度だが、暮らしの安全や平穏な生活という点ではカナダ並みの豊かさを享受しているのである。
  それと裏腹に、・・・「一日1ドル」という画一的なレートで世界の貧困問題を議論することはあまりに大ざっぱだということになる。
 (以上、引用終わり)

引用部分の太字をまとめればよい、ということは、柏陽の受験生ならわかるだろう。ここが抜き出せないようならこの問題は捨てるしかない。英語をがんばれ。
前者は「所得」「豊かさ」という指定語句があるので、その周辺を言い換えて字数を合わせればよい。
 「大理の白族居住地域の所得はカナダのそれの50分の1程度」→「所得が低い」
 「暮らしの安全や平穏な生活という点ではカナダ並みの豊かさを享受している」→「ある点では豊かさを享受している」
つなぎ合わせると、「所得が低くても、豊かさを享受している点もあること。」
完全な解答とは言えないし、模範解答とも言えないが、これくらい書ければ0点は防げる。
後半は言い換えが難しい分、たいへんだ。場合によっては捨て。
「『一日1ドル』という画一的なレートで世界の貧困問題を議論することはあまりに大ざっぱだということ」→「所得だけで豊かさを議論するのはおおざっぱだとういうこと。」
こちらも模範解答とも言えないが、これくらいかければ十分だろう。

長くなりましたので、次に行っちゃいます。

(イ)下線部(2)「世界の貧困は南の世界に集中している」とあるが、「南」のグループ
  が指摘した「貧困」の原因である「歴史的境遇」を、筆者はどのように説明している
  か。「歴史的境遇」を説明している最も適当な箇所を65字以上、70字以内で本文中か
  ら探し、その最初と最後の5字ずつを記述用紙に記入しなさい。

こちらは抜き出しなので、絶対に正解したい。該当箇所を引用します。

(引用始め)
・・・このグループは、自分たちが集まり「北」の先進国と交渉を始める理由は「共通の歴史的境遇」にあるからと説明している。
 つまり、これらの国々のほとんどが1819世紀以来の植民地体制の下で列強に支配され、先進国に原燃料や食料を提供し、先進国の工業化を支え、その工業製品を輸入する国際分業体制の中心に置かれてきたのである。このような一方的な国際分業体制の下では、自国で工業は発達せず、輸出品に付加価値を付けることもできず、教育や科学技術を普及させることも無視され、もっぱら肉体労働で輸出を支えていた。この国際分業体制を通じて、北の国が資本を蓄積し、工業化を進め、今日の繁栄の基礎をつくることができたことには疑いの余地がないだろう。
 高所得国は温帯国、中低位所得国は熱帯・亜熱帯国というきれいな線引きの根拠はこの「歴史的境遇」に発するといえる。
(引用終わり)

なぜこの部分が該当箇所なのかといえば、「歴史的境遇」という言葉があるからである。柏陽受験生には説明不要だろう。
問題なのは、このように易しい問題をきっちり得点できることだ。
時間を短縮するために、また万が一の失点を防ぐために、「字数制限のある抜き出しはケツから(後ろから)数える」というテクニックを使うこと。
そして、1か所だけではなく、いくつか候補を挙げて、自力で選択問題にしてしまうことがコツだ。
すると、候補は「・・・に置かれてきた」で終わる部分と、「・・・で輸出を支えていた」になるだろう。前者は68字、後者は69字になる。
どちらが「歴史的境遇」の説明としてふさわしいかを考えたとき、歴史という語句に通ずる「植民地体制」という語句がある前者を選ぶのだ。

いよいよ最後。

(ウ)二重線部「貧困はつくられる」とあるが、「南の世界」が「貧困」を改善していくためにはどんな方策をすすめて、どのようになることが望ましいのか。下線部(2)以降に示される筆者の具体的な考え方を踏まえ、次の条件を満たし、80宇以上、100字以内で記述用紙に記入しなさい。
〔条件〕
  「南の世界は」(字数に含む)で書き始め、「科学技術」「工業化」「肉体労働」
  「付加価値」という四つの表現(用いたことが明らかになるようにその表現には
  下線をつけること。)をすべて用いること。

さあ、またまた条件のたくさんある記述です。「具体的に」はとっても大切な条件。今後も、「具体的に」とあったらしっかりマーキングしましょう。
ぶっちゃけて言えば、面倒ならば、また時間が足りないと感じたならば、すぐに次の問5(英語)をやるべき。
国語・小論文が得意で、準備をきちんとしていて、すぐに答えがわかりそうで、時間に余裕があって初めて取り組むべき問題です。
特色検査で満点を狙っちゃだめですよ。
さて、また該当箇所を引用します。

(引用始め)
 つまり、これらの国々のほとんどが1819世紀以来の植民地体制の下で列強に支配され、先進国に原燃料や食料を提供し、先進国の工業化を支え、その工業製品を輸入する国際分業体制の中心に置かれてきたのである。このような一方的な国際分業体制の下では、自国で工業は発達せず、輸出品に付加価値を付けることもできず、教育や科学技術を普及させることも無視され、もっぱら肉体労働で輸出を支えていた。この国際分業体制を通じて、北の国が資本を蓄積し、工業化を進め、今日の繁栄の基礎をつくることができたことには疑いの余地がないだろう。
 高所得国は温帯国、中低位所得国は熱帯・亜熱帯国というきれいな線引きの根拠はこの「歴史的境遇」に発するといえる。
(引用終わり)

前の(イ)と同じ部分になってしまいました。
ここから「具体的」な部分を探すと、
・・・自国で工業は発達せず、輸出品に付加価値を付けることもできず、教育や科学技術を普及させることも無視され、もっぱら肉体労働で輸出を支えていた」
ってところでいいですかね。納得できますか?
これを解答に仕上げるには、テクニック「反対にする」を使います。大学受験生には「逆・対偶を考える」と教えることがあります。
つまり、南の世界が不利に扱われてきた事実を、すべて克服すればいいわけです。
そのためには事実の逆を書けばいい。
→「南の世界は、肉体労働のみで輸出を支えることから脱するために、科学技術を普及させて工業化を推進し、輸出品に付加価値を付けていくために、教育を普及させることが必要である。」
でどうでしょうか?
模範解答はもう少し広い範囲をまとめていますが、これだけでもかなりの得点になると思います。ちょっと日本語として変なところもありますが。
何度も言うように、特色検査で、最初から満点を目指してはいけません。
15分かけて10点を狙うより、3分で5点、5分で8点を狙うのです。

思った以上に長くなってしまいましたので、今日はここまでにします。
次回は問5の英語を考えてみます。

つづく

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