2017年7月25日火曜日

数学について その6



前回、数字を自由自在に操る、というお話をしました。
前回はかけ算のお話でしたが、このことは足し算引き算にも言えるので、少し補足します。
みなさんはこの式、筆算しますか?

1000-99=

答えはもちろん901ですが、これを筆算する中学生は、私の感覚だと7割くらいに上ります。
5段階評価で4を取るような子でも、思わず?筆算してしまうのです。
暗算でやる場合は、

99を100+1に分解して、1000-100+1とする方法

99に何を足すと1000になるかを考える方法(99に900を足すと999だから、あと1を足せば1000になる、など)

などが考えられます。
このことは、補数(補ったらある数になる数。例えば、66の100に対する補数は34です)の考え方ができるようになるとよく理解できます。
理解できます、とは申しましたが、実はこの補数の考え方、小1でみんな学習しているのです。
「足したら10になるかず」というやつです。

7に何を足したら10になるかな? 答えは3だよ。

というもの。
なのに、小学校1年生から習っているに、先の問題で「99」という数字にピンと来ない。
そんな中学生が7割もいるのです。
確かに、筆算だと計算間違いが減る、と思うかもしれません。
しかし、筆算では繰上り・繰り下がりや、桁、単純な足し算・引き算のミスを犯しやすくなります。
加えて、筆算では作業に夢中になって答えの妥当性(答えの妥当性については、別の機会にご説明します)がおざなりになることもあります。
暗算では、1000-99は900くらいになるだろう、という妥当性のもとに計算し確認しますが、筆算だとそのことを忘れてしまう。
とくに小数になると顕著で、ありえない桁数になることも、中学生にはしばしば見られます。
さらに、繰り下がりのある引き算では、20までの数に対する補数を、暗記するくらい練習するとよいでしょう。
8の17に対する補数は? 9です。これが、すなわち引き算の答えになります。
55-18などの計算では、8の15に対する補数7を一の位に書き、十の位は繰り下がったので4-1の答えである3を書きます。
数学のできる子はこれを瞬時に暗算できるのに対し、普通の子はこれを筆算しないとできません。

数学の関門その2としてお伝えした、「数字を自由自在に操作できる」ためには、「逆引き九九」の他に、「補数」の習得も基本として必要だと言えるでしょう。
いずれも、小学校1~2年生で習うことだったのですね。


つづく



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2017年7月13日木曜日

数学について その5



それでは、次の問題はどうでしょう。

次の式を因数分解しなさい。 
x+14x-32
  

上の問題は、-32の部分は前問と同じですが、xの係数が-4から14へと変わっています。
これを解くためには、かけて-32、足して+14になる数字の組み合わせを探します。
答えは16と-2です。
よって答えは、
x+16)(x-2)
となります。
この問題になると、解ける子の割合が少し減り、解くスピードも少し遅くなります。
理由はもうお分かりだと思いますが、かけて-32、足して+14になる数字の組み合わせが、九九にない数字だからです。
これはまだ数字が小さいのでまだできる子が多いのですが、

x-13x-48

x-14x+95

x+11x-102

となると、素因数分解を始める子がいきなり増えます。
九九にない数字の組み合わせですし、大きな素数の倍数もあるので、無理もないと思えます。
答えは、上から
x-16)(x+3)
x-19)(x+5)
x+17)(x-6)
となります。
私たちも無理な子には素因数分解をさせますし、みんながみんなこれらを即答できるべき、とも思っていません。
しかし、大学受験で数学を使えるかどうかは、このあたりにも関門があります。
ではどうすればいいのか?
20までの倍数を覚えればいいのか?(インドでは20×20までの九九のようなものがある、と聞きます)
いえ、違います。
その方法では、では23の倍数が出たらどうなるのか?31の倍数は?となり、きりがありません。
数学は、これも後述しますが、できるだけ暗記をしないよう努めなければなりません。
ではどうやって対応するのか?
それぞれ考えてみましょう。

x-13x-48

について、まず、かけて-48、足して-13になる数字の組み合わせを考えます。

考え方(ご参考)
48=6×8だが、6と8をどう足しても引いても13にはならない。
よし、6×8 を 3×16 とか 12×4 とかしてみよう。

・・・ここがキモです!
48=6×8 を 48=3×16 や 48=12×4 とする能力。
なんで?とお思いの方も多いのではないでしょうか。
事実、中学生でこの式の変形?を理解して「実践」できる子は、10人中2~3人いるかどうかです。
48=6×8 の6を2×3と考え、瞬時に6から切り離し8にかけてしまうのです。
ゆっくり式で説明すると以下になります。
48=6×8
  =2×3×8
  =3×2×8
  =3×16
これを、頭の中で瞬時に行う子が、中学にいるのです。
多くの子が素因数分解を使うか、多少できる子でも1×48=48、2×24=48
・・・と時間がかかる方法で解く一方で、瞬時に回答する子がいるのです。
48=6×8 を 48=3×16 に変えることは、見た目はそんなに難しいことではないですし、理解はできるでしょう。
学校では小3で習いますし。
しかし、それを実践で使えるかどうかとなったときに、「6を瞬時にかけ算の形にして一方の数字をもう一方の数字にかける」という発想ができるかどうか。
そういう訓練をしようと思うかどうか。
考え方を面白い、便利だと思えるかどうか。
まさにそれが、高校でも数学に困らないかどうかを決めるひとつの関門だと、私は感じるのです。
なぜなら、これ以外のやり方では時間がかかるという点が一つ。
もう一つは、数字を自由自在に操作してそれが楽しいと思えることこそ、数学を武器にできる才能だと思えるからです。

話は少しそれますが、昔、勉強があまり得意でない子がいました。
でもその子はマージャンが得意で、点数計算が瞬時にできるんですね。
マージャンには親と子という立場があるのですが、親の点数は子の1.5倍です。
その子は、勉強は不得意なのに、その1.5倍の計算が瞬時にできるんです。
どうするかって?
1.5倍というのは、ある数の半分をその数に足す事なんです。
具体的には、
2600×1.5260013003900
とします。
方法を知ること、納得すること、それを便利だと思うこと、そして訓練することで、勉強が得意でない子も、これくらいできるようになります。
まして、数学を大学受験で使おうという人が、数字を自在に操れなくてどうしますか?
異論はあるかもしれませんが、私は数学ではできるだけ筆算をしないほうがよい、いや、むしろ筆算をしたら負け、くらいに思っています。
筆算をするときには「面倒くさいなあ」と思っています。
でも、数学の苦手な子は、中学生や高校生になっても、32÷2を筆算します。
15×3を筆算します。
これでは、受験で数学を使えるはずがないのです。
だって、時間もかかることながら、数の性質(倍数や約数など)もわかっていないことになるのですから。


数学の関門その2 
「数字を自在に操作できること」



つづく





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2017年7月7日金曜日

数学について その4



それでは、早速ですが中3の因数分解の問題を見てみましょう。

次の式を因数分解しなさい。
-4x-32

上の問題は、因数分解でも易しい部類です。
これを解くためには、かけて-32、足して-4になる数字の組み合わせを探します。
答えは-8と4ですね。
よって答えは、
(X-8)(X+4)
となります。
これは易しい部類とはいえ、うっかり符号を逆にしたり、考え方を忘れていたりして、間違える子も少なからずいます。
また、8と4という数字の組み合わせを探すのに時間がかかりすぎる子もいたりして、どの子も最初から楽々できるわけではありません。
一方で、ほとんど訓練せずとも楽々、素早く解く子もいます。
この差は何なのか、少し考えてみて、「数学には何が必要なのか?」の第一歩としたいと思います。

上記の問題で最も大切なのは、32=4×8が瞬時に頭に浮かぶ能力です。
これは「逆引き九九」と私は勝手に呼んでいる考え方です。
例えば、「24」と出題者が言ったら、回答者は「ろくし、しろく、はっさん、さんぱ」と即答できるような能力です。
これは、できれば小2か小3でできてほしいところ。
無理であれば小学校高学年や中学生になってからでもよいのです。
学校では素因数分解(対象となる数を素数で割り続け、割る数をすべてかけ算の形にする方法)によって解く方法も教えてくれますが、この方法をいちいち使っていたら絶対に時間が足らなくなるように試験はできていますので、素因数分解を使った因数分解をすることは事実上、できません。
中3の春休みまでには「瞬時に」を目指しましょう。
「逆引き九九」が瞬時にできるかどうかは、将来数学を使えるかどうかの、一つの関門といえるでしょう。

数学の関門その1
「逆引き九九」



つづく



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