2015年11月3日火曜日

オール3からトップ校へ 体験談

今回は体験談をご紹介。
中1時にオール3に毛が生えた程度から、特色検査で高得点を出して柏陽に入った子がウチの塾にいる。
以前にも、同じような推移を描いてサイエンスフロンティアに入った子がいたし(春名賢人くんです)、さらに前に柏陽、小田原、法政第二に入った子も、似たような成績だった。そして、私自身も。
当たり前のことだが、中1時にオール3くらいの子は、それなりに成績を上げ、成績なりの公立高校・私立高校に入るのが普通だ。
でも、何人かに一人くらいは、中1時にオール3くらいでありながら、トップ校に入る子がいる。
そういう子は、普通の子とどこが違うのだろうか。
もちろん、トップ校以外に入学することはぜんぜん悪いことでも、価値がないことでもない。
本人やご家庭の選択もある。トップ校に入ることが、イコール幸せというわけでもない。
ただ、『http://totalcomune.blogspot.jp/search/label/中学生へ』でも書いたが、もし憧れの高校があり、入れたら嬉しいな~、という気持ちがあるなら、目指してみるのも悪くない、と言いたいだけである。
目指す。トップ校に入れるかどうかは、目指すか目指さないかの違いだけなのだから。


ここで、一人の体験談をご紹介します。
柏陽高校に合格したRくんの中1時の成績は、5段階で3と4がほどよく混ざった、平均より少しだけ上の成績だった。他の中3と比べても突出しているわけではなく、ごく平凡な中学生だった。
むしろ、帰国子女だったためか、国語と社会がものすごく苦手で、漢字は書けないわ、歴史や地理を知らないわで、散々苦労していた。
英語ですら帰国子女のご多聞に漏れず、文法がしっかりしていないので、定期テストですら80点台に終わり、他の塾生に負けることもしばしばであった。
体もあまり丈夫ではなく、小学校時代にはあまり勉強していないという。
そして、将来の夢は『たこ焼き屋』
なぜかと問えば、けっこうな野望に基づくものらしかった。変わった子である。
とはいえ、人当たりもよく、誰とでも分け隔てなく接することができ、常識もよくわきまえていた。

彼の転機は、中2の夏くらいであったと思う。
高校を飛び越して、大学は大阪大学に行きたいというのだ。
じゃあ、阪大に入るにはどんな高校に行けばいいの?
言い換えれば、阪大に合格実績のある高校はどこ? 
と考え、高校別の進学実績を調べてみたのだ。
すると、神奈川では翠嵐・湘南・柏陽のどこかに入らなければ、入る実力がなければ、阪大は難しいとわかった(中高一貫校は別だが、高校からでは入学できない学校が多い)。
高校別進学実績一覧を見つめる彼は、そのとき何を思ったのだろう。
内申はオール4すらない。
でも、いわゆる神奈川トップ3に入らなければ、いや、そこに入る実力がなければ、阪大に入ることが難しいことは、現実問題として高校別進学実績一覧から明らかだった。
比較的おっとりとした性格をしていて、どちらかと言えばインドア派のRが、果たしてトップ校に向かうエネルギーを持っているだろうか?
私としては、そんな不安もあった。
ただ、再三お伝えしているように、トップ校へ入るためには、まず目指すことが必要だ。
いや、目指すだけでいい。
Rから目指すことを聞いた私たちは、Rをそのように扱い始めただけだ。

トップ校に合格するような子の努力は、すごく地味である。
漢字練習をして、国語辞典を引いて、県入試レベルの計算や図形問題の反復練習をする。
その上で、大学受験を視野に入れるならば、勉強に対する考え方が大学受験生レベルでなければならない。
単純な暗記はNGで、ものごとの背景まで理解した上で覚えなければ、高校入試や特色検査、ましてその先には通用しない。
すべての解答に理由をつけられなくてはならないし、解答に至る道筋はプロ講師の許容範囲でなければならない。
たかが平方根や方程式の計算であっても、許容できる道筋は、普通は1つ。例外的に2つ。
英語は英語のルールで考えなくてはダメ。
国語は、選択肢を選ぶ理由が許容範囲でなくてはダメ。
社会は、正しい日本語で説明できるレベルで理解しないとダメ。
ダメ、だめ、駄目・・・
いったい何度、ダメと言ったことか・・・


Rは、決して順調だったわけではないし、何でもすぐに覚えるほど記憶力がよかったわけではない。むしろ、逆だ。理解力も暗記力も平凡だった。
中3になって模試を受けるようになっても、当然のようによい判定が出ない。
そして、志望校をMヶ丘にすると言ったり、K学園にすると言ったりした。
模試で満足な結果が出なければ、自信がゆらいで不安が頭をもたげるのも当然だ。
別にK学園でもぜんぜんいいのだが、でもやっぱり、初志貫徹しないのは気持ちが悪く、逃げではないのか、阪大はどうした、という気持ちは私の中にあった。
中3の内申がK学園の併願を取れるレベルだったことと、Rにとって特色検査の内容がMヶ丘より柏陽に向いていることを話し、
「Rよ。もし神様が『柏陽に入れてあげるよ』と言ったとしたら、柏陽に入学するのか?」
と聞いた。
Rは即答した。「はい。」
じゃあ柏陽にチャレンジすればいいじゃないか。失うものなんて何もないじゃないか。
そんな気のきいたセリフを私が行ったかどうかは覚えていないが、とにかくRは柏陽を受験する意思を固めた。
それからは苦手な社国を捨て気味にして、英数理と特色検査にかなりの時間を割いた。
(実は面接にも力を入れたのだが、面接についてはまたの機会に)
こうして、私たちはRを、合格可能性60%(主観・予想)の状態で送り出した。


春になって、Rは得点開示をした。
特色検査の点数は、平均点を少なくとも10点以上(ひょっとしたら20点以上)、上回っていると思われた。
面接は、基準点?を23点超えていた感じだ。
そして、送られてきた塾向けの高校受験データからは、RのC値は、ふつうに、ちゃんと、上位90%の中に入っていたようだった。二次選考ではなかった。

現在高1のRは、運動部に所属しながら、“塾版中高6ヵ年一貫教育”を実践すべく、きちんと決められた日に通塾している。
数学をガリガリ進めていて、なんだかもう微分に入ったようだが、勉強していると少しだけ楽しそうに見える(地顔が笑顔だからそう見えるだけかもしれないが・・・)。
べつにね、阪大じゃなくてもいいんだ。
人間は、変わるものだから。
勉強をするもしないも、どんな道に進むのかも、すべて自分の意思で選び、後悔したり人のせいにしたりしないことが大事なんだな。
Rいわく、柏陽の最大の魅力は、駅から近いことらしい。
入学しちゃえば、そんなもんだよな。
そう。壁を超えたその先って、なーーーーんにもないんだ。
合格したらパーラダイス!! だと思っていたのに、何にもない。ただの砂漠なんだ。
そして仕方なく周りの環境に合わせて歩いていると、次の壁にぶち当たる。
人生、案外それの繰り返しかもしれない。
憧れの高校は夢のような場所かと思っていたら、すぐに現実に戻された。
憧れの大学は毎日が輝いている場所かと思ったら、意外とみんな冷めていた。
憧れの会社は安心を感じられる場所かと思ったら、やっていけるか不安になった。
憧れの役職は誇りを感じられる場所かと思ったら、重圧の方が大きかった。
このように、ひとつの目標を達成した後でさえ、先のことなんてわからない。
壁を越えても、結局、また壁がある。
だから、どうすれば安心とか、どうすればうまくいくかとか、どこがゴールなのかとか、そんなことに答なんて、ない。
それでも、前に進まなくちゃいけない。

あれ? 何の話をしていたんだっけ・・・



ご意見・ご連絡は・・・

へおねがいします。