合格までの具体策
まあ、小話はこれくらいにして、実際にYがどんな勉強をしていたか、思い出してみましょう。
授業はたったの週200分。予備校に比べればはるかに少ない授業でした。
Yは夏期講習や冬期講習の追加も一切しませんでした。
おのずと自習が勉強の中心になります。
Yが一人でできることといえば、世界史と英単熟語と英文法だけでした。
語順整序なんか、一人でやっても無駄でした。
でも、自習でひたすら暗記をしていたおかげで、世界史は慶應大学合格者と肩を並べるまでになっていたのです。
MARCHであれば、得意科目(偏差値70以上)が1科目あれば、合格可能性は高くなります。
逆に、偏差値70以上の科目が一つもないと、合格可能性は著しく低くなります。
Yが青山に合格したのは、世界史という科目選択によるところも大きかったといえます。
英語の授業は、ひたすら文法と語順整序でした。
それでもYは、何回やっても完ぺきにはなりませんでした。
Yは自習でも文法の復習を何度もやっていたのですが、どうしても知識がこぼれていく。どうしても見落とす。
授業で扱った7冊の文法テキストを、復習で3回ずつ繰り返していましたが、
それでも“ランダム英文法標準編”や“ファイナル英文法標準編”のレベルで取りこぼしをします。
MARCHに合格するためには、これらは99%・楽々・秒速でできなくてはならないのですが、試験直前でもYは、85%・苦渋・分速でした。
長文読解は、一切取り扱いませんでした。
長文でも内容一致以外は文法で解き、内容一致はなんとなく取れればいいんです。
この点、ついでに言えば、現代文も古文も、内容を読まずに問いだけを見て解く、という方法を徹底しました。
だって、読んでもわからないんだから、読むだけ無駄ですよね?
古文なんか、品詞分解をすると内容がわからなくなり、内容を追うと品詞を無視するのです。助動詞2つが重なると、ほぼパニックに陥ります。
それでもなんとか話を読み取ろうとしますが、「どんな話だった?」と尋ねれば、単なるでっち上げを答えていました。
ですから、問いだけを見て解く、という方法が、最も合理的だったのです。
Yもそれを理解して、
「現代文と古文は読まない!」
と、自分に言い聞かせるように宣言していました。
そのようなわけで、模試の最終的な偏差値は、英語50、国語50、世界史70くらいでした。
青山の判定は、浪人の11月で、E。
まるで現役生の成績です。
でも、人生でのトータルの勉強量は普通の現役生にも及ばないのですから、それも当然と言えましょう。
このころから過去問演習に入るのですが、いやはやそれにしても、なぜ、どうやって受かったのでしょうかねえ?
実は、このころようやく、英語や国語の語彙力がついてきました。
単語・熟語・漢字・現代文の語句を覚えてきたのです。
これは、地味ですが強力な武器なのです。例えるなら、足軽が甲冑や鎖帷子を身に着けたというところです。
つまり、最低限、“即死しない”レベルになったのです。
MARCHを受験するのに漢字が書けない、単語を覚えていない、というのは実に致命的で、そういう人はまず合格しません。
授業でいっしょに過去問を解いていて、語彙力が入ったことを私は最も身近で感じていました。
ならば、あとはテクニック。ひたすらテクニック。
理解はどうでもいい。テクニック、テクニック、テクニーーーーック。
受験直前、YのMARCH合格可能性は、50%だと思っていました。
合格可能性50%ということは、私は、“4回受ければ1回受かる”と認識しています。
そして、Yにもそのように伝えました。
そして、Yは私の言うことを素直に聞いて、青山を1つ、法政を3つ、受験しました。
2月下旬。
Yは、
「青山に受かりました」
と、自宅は遠いのに、わざわざ教室に報告に来てくれました。
教室は、
ザワ…ザワ…
と、私一人でザワザワしていました。
だって、2月下旬の日中なんて誰もいなかった・・・ような気がします。
実は・・・
あんまりそのときの詳細な記憶がないんですよ。残念ですが。
ただただ、恥ずかしそうな、バツの悪そうな、なんか悪事でも露呈したようなYだけが印象に残っています。
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(昨年度の途中経過) |
余談。
法政は、3つとも不合格でした。
偶然にも、私が言った通り、“4回受ければ1回受かる”という結果になりました。
ちなみに、成蹊大学の入試では、Yのヤツ、またマークをずらして書き、補欠でした。
後日談。
実は受験直前、私はYに、
「法政と青山、両方受かったらどっちに行きたいの?」
って聞いたら、Yは
「法政です!」
って言っていたんですよ。
だから私は青山に合格したYに、
「法政じゃなくて残念だったな」
って声をかけたんです。
ところが別のヤツにその話をしたら、
「ああ、あれですね。Yのやつ、青山って言ったらおこがましいと思って、つい法政、って言っちゃったんだそうです。本心では青山に行きたかったみたいですよ。だからオーライです!」
だと。
ったく、どこまで・・・・
現在のYですか?
タ〇コ吸いながらパ〇ンコやってるらしいです。
4年間で卒業できるかどうか、危ういらしいです。
いいんじゃないですか?
Yの勉強ぶりを目の当たりにしていた後輩の中に、
「あの人が受かったんだから、アタシもがんばれば・・・」
と言う子も出てきています。
Yは今、すべてのホンモノたちの星になったんです!
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出典 カメレオン コミックス47巻 |
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