2015年10月25日日曜日

座談会 高校入試と特色検査

MJ「さて、早速、座談会を始めたいと思います。」
副K「ダメなやつだね。」
MJ「なんですか、藪から棒に。」
副K「まあいいや、始めましょう。」
MJ「前回まで、柏陽高校の特色検査の過去問を解説してたんですよ。昨年度、柏陽高校の特色検査で高得点を取ったおかげで合格した子がいたのが嬉しくてね。してやったり!って感じで。どうでした?」
副K「まあ、いつものキミらしい授業だったね。つまらない。」
MJ「・・・これ、座談会なんですけど。私への批判とか、私を教育する時間じゃないんですけど。」
副K「まあ、実は途中で読むのやめちゃったんだよね。ハハッ。だから、何とも言えない。」
MJ「・・・私、何かしました? 気に障ることとか?」
副K「べつに。いつも気に障るから、今回だけ特別っていうわけじゃないよ。」
MJ「そうか。それならよかった。要は、いつものK先生だ、っていうことだね?」
副K「今回のテーマは特色検査に特化するの? それとも高校入試について?」
MJ「どっちでもいいです。」
副K「・・・殴っていい?」
MJ「まずは特色検査に特化しましょう。いずれ、高校入試との関連が出てくるはずなので、そのときは高校入試の話もおk。大学入試の話もおk。」


副K「結論から言うと、特に内申の低い子にとっては。特色検査は超重要。対策のしかたによって大きく点差が開くでしょう。」
MJ「たしかに。」
副K「特色検査ができれば、内申も入試5科目の点数もそこそこでいい。ぎりぎりでいい。」
MJ「たしかに。」
副K「でも、普通の集団塾だと対策はやりにくんじゃないかな。どうやってるんだろ? だって、科目ごとに講師が違うでしょう?」
MJ「たしかに。科目ごとに講師に責任があるから、『この問題は捨て』とか言いにくいかもね。」
副K「そうなの。特色検査の問題の全体を見渡して、問題の難易度や生徒の得手不得手を見極めて、『ここは捨て』『ここは絶対に取る』とか言ってあげられないと。」
MJ「まあ、大手塾さんはうまくやっているんだろうけれど、『入試5科目はほどほどでいいから、特色検査をガッツリやろう』とまでは言えないのが普通だよね。」
副K「ウチの塾は1人が5科目やるから、全体を見渡した上で作戦が立てられる。メリットは大きいと思う。」
MJ「それに中1・中2から意識させられる。特色検査のある高校を受験する予定の生徒にとっては、中2内申より特色検査の点数の方がはるかに大きいんだからね。」
副K「中2の内申なんかより、特色検査に必要な思考力と技術の養成が優先よ。中3の冬から慌てて特色検査の対策をしたって、できない子はできない。」
MJ「なんたって、河合塾の模試で英語の偏差値が65で世界史の偏差値が70の大学受験生が、湘南高校の特色検査で20点しか取れないんだからね。」
副K「それは理科とか忘れているから仕方ない面もあるけど、詰込み型の学習をしてきた中学生は、特色検査でひどい点を取る可能性があるね。」
MJ「柏陽の合格者には少ないと思うけど、1対1対応の勉強をしていたら、特色検査は厳しいな。」
副K「いやいや、いるよ~。港南台一中や日野南中は内申を取るのが難しいから、内申が高いイコール学力があると推定できるけど、内申が甘い中学はある。そんな中学でオール5を取ってしまえば、あとは入試でがつがつ点を取る勉強をしていれば、特色検査で失敗しても合格できちゃう。」
MJ「そういう子は、入学してからが心配だな。」
副K「トップ校でも、必死に勉強しているのについていけなくなる子って、少なからずいるよ。遊んでて落ちこぼれるわけじゃなくて。」
MJ「遊んでて落ちこぼれるのは当たり前だからね。自業自得だと、本人も自覚してるから問題ない。」
副K「でも、努力してても、(高校の授業に)ついていけない子がいるの。現実に。だからこそ、高校に入ったら、勉強に対する考え方や取り組み姿勢を変えなきゃいけない。バカの壁を作らずに。」
MJ「変化の必要性だね。」
副K「1対1対応の勉強をしてきた子って、『解き方がわからない』って平気で言うでしょ。『まず解き方を考えてみよう』とか『解き方を編み出してみよう』『今までに習ったことが使えないか?』などとは思わないらしい。勉強の楽しさ、学問の楽しさ、知性を身につける楽しさを知らないの。かわいそう。」
MJ「唯々、勉強が苦痛みたいなんだよね。勉強イコール修行になっちゃってる。いや、修行ならゴールがあって成長があって達成感があるから、修行よりひどいな。拷問かな。」
副K「拷問だね。身体的な拷問より苦痛が小さいだけで、じっと嵐が過ぎ去るのを待っている、という意味では拷問だよ。」
MJ「大学受験の現代文や英語の評論文を読んでいると、そういう話題がたくさん出てくるよ。何のために勉強するのかって。答えはひとつじゃないけれど、ヒントは世の中にちりばめられている。少しだけ素直になって、バカの壁を取り除いて、考えてみるといいよな。」
副K「『勉強法の真実ブログ』を隅から隅まで読め。」
MJ「中3や高3の受験期には、膨大な暗記をしたり、テクニックと割り切ったりしなきゃいけない時期はある。だから、小学校や中1中2、高1高2が教養を身につけるチャンスなんだ。」
副K「教養がないと、旧帝大や早慶には入れなくなっちゃう。マーチクラスでも、教養がないと不利になっちゃう。特色検査も同じだよ。」
MJ「お、話が戻ったね。ドリルや1問1答の暗記だけでは、特色検査ではまともな点数が取れない。」
副K「そう。高校側は、大学受験に対応できる子が欲しいの。高校入試はバカ暗記していればソコソコの点数が取れるけど、大学受験でそれをやったら潰れちゃう。だって、分量がものすごいから。それに、定期試験では範囲があるから満点を狙って勉強するけど、大学入試は違う。大学入試は満点を狙う試験じゃない。県入試くらいまでだと満点が狙えるから、満点が取れない特色検査こそ、大学入試に耐えられる資質を持っているかどうかを判別できる。」
MJ「たった50分のテストが、中3内申と同じ配点になるんだよね。特色検査は。内申の関係ない、一発勝負の大学入試と親近感がある。」
副K「前から言っているけど、高校受験は通過点でもあるけど、大切な経験でもある。やっぱり高校入試を経験した子と経験をしていない子では、大学受験に向うときの姿勢は違う。高校受験を経験した子は、受験は落ちることがあるんだ、ってわかってる。」
MJ「中高一貫校の子は、大学受験をするんだ、全部落ちたら浪人なんだ、っていう実感が薄い子が多いね。」
副K「アタシは、個人的には高校受験には賛成。中学受験だと、大学受験の時には時間が経ちすぎていて覚えてないし、中学受験は親の受験である場合も多いから、受験生本人の経験になっているかどうかは疑問。」
MJ「栄光や聖光の連中は別だと思うけどね。あいつらは才能もあるから。」
副K「御三家はいいの。問題なのは、普通の才能の子たち。」
MJ「才能がないなら、よりいっそう努力と経験を積むしかない。」
副K「だから、特色検査が始まって、高校は今まで以上に“大学受験向き”の子を選べるようになっていると思う。今までは高校で挫折してしまっていた子を、あらかじめ排除できる。」
MJ「シビアな言い方だけど、現実はその通りだね。真実だ。特色検査や面接をもってしても、まだ選抜方法としては甘い気すらする。」
副K「まだまだ今後も高校入試は変わっていくだろうけど、文科省の“思考力重視”の方針は変わらないと思うな。」
MJ「センター試験も変えるみたいだしね。っていうか、二極化するんだよね。勉強があまり得意でないグループと、勉強で未来を切り開いていこうというグループと。」
副K「二極化は、どちらかというと賛成、かな。勉強が不得意な子を、得意な子と同じ問題で判定しようとすることに無理がある。」
MJ「スポーツと同じだな。スポーツだってクラス分けするだろう。スポーツが苦手な子がいるように、勉強だって、べつにできなくったっていいんだもんな。勉強したいヤツだけ勉強すればいいんだよ。それが本来の姿だ。」
副K「勉強って、強制されたり、心を壊してまでやるものではないよ。」
MJ「そうだそうだ。自ら進んでやるもんだ。目標をかなえたり、目の前の壁を越えるためにやるもんだ。」
副K「そう。それがないと、特色検査にも、その先の大学受験にも耐えられないと思う。」
MJ「そうだね。特色検査は、大学受験のためのよい経験、と。」
副K「そして、特色検査では、5科目を横断的に考えたり、作戦や戦略が必要だから、苦手であれば5科目ができる先生にアドバイスを求めたほうがいいだろうね。」
MJ「その意味では、もし苦手なら、やはりどこかの塾に行かなくてはならないかなあ。独学だと厳しいよなあ。克服できればいいんだけど。」
副K「塾に通っていたとしても、結果が出なければセカンドオピニオンを受けてもいいんじゃないかな。できれば早い段階で。」
MJ「あと、中2くらいからは特色検査を意識してほしいね。そのためには、英数は中学内容を少しだけ超えた考え方が必要だね。理科や社会は背景知識にまで興味を持ってほしいし、国語のためには、社会問題に興味を持って、そういう問題を扱ったテレビやネットや本を見てほしい。」
副K「英数なんかはどんどん予習して、中3の夏までには県入試問題を解けるくらいになるのは当然のこと。それをやりつつ、勉強の楽しさを見いだせないといけないかな。」
MJ「でも本当、いろんな子がいるよね。勉強に対する姿勢、学力、環境などは十人十色だ。だからこそ個別塾をやっていると面白んだけどね。」
副K「中1でオール4以下の子が、中3で5科オール5になり、特色検査で高得点を取って合格する。それも個別の醍醐味。」
MJ「そこまでは伸びなくても、悲壮感無く楽しく成長して、中1でオール3くらいの子が、中3でオール4くらいになるのもまた醍醐味。中1からオール5の子を、早くから特色検査や大学入試を意識させて、テスト勉強以外のいろいろな話をするのもまたよい。」
副K「でも、一番は中学生の時から大学受験まで見ていて、成長を実感するときかなあ。塾での中高一貫教育。アタシが一番好きなの、これだなあ。」
MJ「前から言ってるね。たしかに、中学生のときや、遅くとも高1で入会すると、大学受験で成功する子が多いね。ウチの塾は。」
副K「だから、塾による中高一貫教育なんだってば。高校からも入塾するけど、高校生だと本人次第になっちゃう場合があるから、じっくりと変化を期待できるのは中学生だね。中学生は柔軟だから。」
MJ「中1・中2や、高1・高2は本人たちが気楽だからね。勉強以外で吸収できることがたくさんある。私は、高1や高2の間から“変化”を意識してほしい、変化していってほしいと願っているよ。たとえそれが、勉強なんかしなくていいや、っていう方向でもね。それで将来へ向かうのであれば、嫌々勉強するより全然よい。」
副K「あんたは願うだけだからいいよね。結局、最後はアタシが出張んなくっちゃなんなくなるくせに。」
MJ「私は生徒を温かく見守って、だな、・・・ってこの座談会、最初と最後が締まらなくない?」
副K「だって、いっつも嫌な役はアタシに任せて、自分は『ウシャシャシャ』って言ってるだけじゃん。厳しいことなんて言えないじゃん。」
MJ「言ってるよ! 本来は塾の禁句である『( 放送禁止 )』なんて、1日に3回は言ってるし。」
副K「文で言いなさいよ! 本当に説明が下手なんだから。いっつも『ウヘラウヘラ』しか言わないじゃん。」
MJ「・・・このブログがいくら塾名を伏せてるからって、生徒や親御さんが見てらっしゃるかもしれないんだぞ? 本当のことを言ってどうする? いや、本当じゃなくて・・・」
副K「えー、教室では、いつもこのような感じです。この座談会も、嘘偽りなく、本心で語っております。」
MJ「はい。もし気分を悪くされた方がいらっしゃいましたら、心よりお詫びいたします。どなたかを中傷・非難・批判などする意図はまったくございません。むしろ、いつも応援したい気持ちなんです。最後に、まとめをしましょう。」
副K「特色検査は、大学入試のためにはとてもよい訓練です。得意になるととても有利ですから、力を入れましょう。」
MJ「いろいろなことに興味を持ちましょう。物事に対する興味は、前進と変化の源です。」
副K「自分を変えてくれそうな塾を見つけることも、成長のためなるでしょう。べつにウチの塾、っていうわけじゃなくて。私の理想は、やっぱり長く通ってもらうこと。技術を与えるだけじゃなくて、成長を見たいから。1年だと短い。最低でも2年、欲を言えば中1から高3まで見たいな。」
MJ「塾版中高一貫教育だね。確かに、密度の濃い時間を過ごせれば1年でも変われると思うけど、長い方が理想だな。私も、生徒たちに変化を促せるよう、ますますがんばります。」
副K「そうだね。もうちょっとがんばったほうがいいね。」
MJ「・・・・・・・」


MJ副K「それでは、失礼いたします。<m(__)m>」



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2015年10月21日水曜日

特色検査について④

柏陽高校平成27年度特色検査のつづきです。
前回までに問1~問4までを云々してきました。
今日は問5。特色検査の独断解説・専行解読の最後です。

問5は英語の問題。
いいかげん飽・・・いえ、長くなってしまったので、ここはポイントだけお伝えします。
ここは柏陽の特色検査の中で最もフツーな、おそらく最も点が取りやすい問題でしょう。
ただし、英語が得意であれば、です。
基準としては、英検3級で、リスニングを除いて90%程度の得点力を持ち、さらに神奈川県の独自問題・東京都の自校作成校の問題・国立大学附属校の問題を数多く(ほぼ満点が取れるまで)解いて鍛えれば、ここでもほぼ満点が取れると思われます。
中3の場合、英検準2級や難関私立高校の問題を解くのもいいのですが、それらは中3のカリキュラムを逸脱している場合があるので、混乱を招く恐れがあります。
また、英検準2級や難関私立高校の問題では100点ではなく6070点でよいので、100点を目指す県立高校の問題とは、質も取り組み方も異なります。

前置きが長くなりました。
で、どのくらいのレベルかというと、やはり具体例を載せたほうが良いと思いますので、一部を引用します。

(一部引用始め)
The idea came from a trip Ethan took with his father ― who 
repairs water wells in poor African villages ― to Mozambique when he was ten years old.

-----------------------------------------------------------------

Interviewer: Was it easy for you to convince companies and people to raise money?
Ethan: It was interesting because the first phone call I made was to a soccer shop inTennessee.
 repairs water wells : 井戸を修理する  convince to : ~に気づか
   せて…させる  Tennessee : テネシー(アメリカ合衆国南東部の州)
(一部引用終わり)

と、こんな感じの文章です。やや難しめの箇所を引用させていただきました。
決して中学英語を逸脱しているわけではありませんが、関係代名詞(省略を含む)が多用されていたり、ハイフォンでの挿入が使われていたり、ひとつの文がやや長かったりと、県入試の英語だけでは不安なレベルです。
問題も、英作文・英数字を書かせる・内容一致・空所補充と多様で、数もあるので配点も少なからずありそうです。
英文の量も少なくはなく、読んだり解いたりのスピードが遅いと、時間面での不安もあります。
そう考えると、最も有効な対策は、県入試より少しだけ難しい問題を、時間内に満点近く取れるまで解いて鍛えるのがよいと思われます。
英検準2級や難関私立高の問題だと、ちょっとやりすぎに思われます。が、難しい問題を解いていれば特色検査が易しく感じられるというメリットもあるので、英検準2級や難関私立高の問題を解くことも悪くはないと思います。

問2~問4までと異なるのは、狙えば満点が狙えると思われるからです。
問2~問4までは、満点が難しい、むしろ狙ってはいけないという質の問題だったのに対し、問5の英語は、がんばれば満点が取れると思われます。
柏陽受験生ならば、英検準2や2級を狙った子も多いでしょう。
そのエネルギーを、
・神奈川県の独自問題
・東京都の自校作成校の問題
・国立大学附属校の問題
を解くことに投じれば、問5の満点は夢でもなんでもないと思うのは私だけなんでしょうかねえ?


さて、これで特色検査の云々は終わりとさせていただきますが、わずかでもお役に立てたでしょうか。
もし誤った情報や解法・解答がございましたらご容赦ください。
それでは、失礼いたしました。


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2015年10月17日土曜日

特色検査について③

柏陽高校平成27年特色検査問題。
前回からの続きです。

問4は国語の問題。
国語とはいえ、「貧困は作られる」「購買力平価ドル」など、苦手な人は大人でも読み取りに苦労しそうな課題。小論文の課題文のようだ。
どのように考えて解くかを考察するために、ここでは、問題の全文を載せます。

 (ア)『下線部⑴「二つの注意」とはどんなことか。それぞれ文末が「~こと。」
   (字数に含む)となるように下線部より前の内容を踏まえて、どちらも20字以
   上、30字以内で記述用紙に記入しなさい。その際、どちらにも「所得」「豊かさ」
   という二語を用いること。』

このように、ただ「説明せよ」よりは、条件が指定されている分だけ楽になっている。この指定された条件を余計なものだ、と思っている人はよほど実力があるか、そうでなければ損をしている人だ。
せっかく、わざわざ、高校が条件を入れて書きやすいように(現実問題として採点しやすいように)しているのだから、ありがたいと思おう。指定の条件はヒントでもあるのだから。
さて、実際に問題文本文がないと考えにくいし、柏陽の難易度を知るためにも、ここは引用文を載せます。以下が引用(問題文の一部)です。

(以下、引用始め)

・・・だが、このような計算に落とし穴があることはすぐわかるだろう。二つの注意が必要である。
 わたしは中国雲南省大理市の白族居住地域を訪ねたことがある。ここではGDPは一人当たり一日1ドルだが、農耕を基礎として、自給経済の上に民芸も盛んで、人びとは穏やかな暮らしを営み、どこの家にもカギがかかっていなかった。2003年にアカデミー・ドキュメンタリー賞を得たマイケル・ムーアは、アメリカのデトロイトでは人びとが家のドアに三重ものカギをかけているのに、対岸のカナダの町では誰も家にカギをかけていない事実を報告している。大理の白族居住地域の所得はカナダのそれの50分の1程度だが、暮らしの安全や平穏な生活という点ではカナダ並みの豊かさを享受しているのである。
  それと裏腹に、日本の場合には貧困ラインは一日1,670円(1人月5万円)で、三人家族で5,000円以下の収入で定職をもたない(定職をもつ場合には東京地域の最低賃金は一時間736円[2006年]なので、一日56,000円の収入を得ることになる)場合には生活保護の対象となり得る。
  1,700円というと、一日1ドルの十七倍の水準(アメリカもほぼ同様)だが、一日17ドルでも自分と家族の生活を支えることができないという問題が生じる。
  だから実際には各国がそれぞれ貧困ラインを設定して、公的扶助の対象を決めており、「一日1ドル」という画一的なレートで世界の貧困問題を議論することはあまりに大ざっぱだということになる。
 以上の⑴二つの注意を念頭に置いた上で・・・
(以上、引用終わり)

引用部分最終行の⑴が下線部である。見ていただければわかるように、引用部分の最初にも「二つの注意」があるから(同じ語句を探すのは基本テクニック)、この間にあることをまとめればよいことがわかる。
そして、どちらにも「所得」「豊かさ」という二語を用いなくてはならないので、答えは決まっているようなものだ。
・・・とはいえ、「所得」「豊かさ」という語句は1か所ずつしか使われていないので、後半はまとめるのに苦労するかもしれない。
ただ、ここまでがわからないようだと、この問題は捨てたほうがいいかもしれない。難しい。
そのかわり、英語を超中学生レベルまで勉強し、次の問5でほぼ満点を取ってほしい。
さて、実際にまとめてみよう。
自分の頭で考え・・・なんていうことは、よっぽど国語・小論文が得意でない限り、やめた方がいい。記述は、×にならなければいい。おおざっぱな理解は必要だが、あとはテクニックを使うべきだ。学校の課題のように時間が無限にあるならともかく、これは試験であり、時間はわずかしかない。では理解のために再度、引用する。

(以下、引用始め)
・・・を報告している。大理の白族居住地域の所得はカナダのそれの50分の1程度だが、暮らしの安全や平穏な生活という点ではカナダ並みの豊かさを享受しているのである。
  それと裏腹に、・・・「一日1ドル」という画一的なレートで世界の貧困問題を議論することはあまりに大ざっぱだということになる。
 (以上、引用終わり)

引用部分の太字をまとめればよい、ということは、柏陽の受験生ならわかるだろう。ここが抜き出せないようならこの問題は捨てるしかない。英語をがんばれ。
前者は「所得」「豊かさ」という指定語句があるので、その周辺を言い換えて字数を合わせればよい。
 「大理の白族居住地域の所得はカナダのそれの50分の1程度」→「所得が低い」
 「暮らしの安全や平穏な生活という点ではカナダ並みの豊かさを享受している」→「ある点では豊かさを享受している」
つなぎ合わせると、「所得が低くても、豊かさを享受している点もあること。」
完全な解答とは言えないし、模範解答とも言えないが、これくらい書ければ0点は防げる。
後半は言い換えが難しい分、たいへんだ。場合によっては捨て。
「『一日1ドル』という画一的なレートで世界の貧困問題を議論することはあまりに大ざっぱだということ」→「所得だけで豊かさを議論するのはおおざっぱだとういうこと。」
こちらも模範解答とも言えないが、これくらいかければ十分だろう。

長くなりましたので、次に行っちゃいます。

(イ)下線部(2)「世界の貧困は南の世界に集中している」とあるが、「南」のグループ
  が指摘した「貧困」の原因である「歴史的境遇」を、筆者はどのように説明している
  か。「歴史的境遇」を説明している最も適当な箇所を65字以上、70字以内で本文中か
  ら探し、その最初と最後の5字ずつを記述用紙に記入しなさい。

こちらは抜き出しなので、絶対に正解したい。該当箇所を引用します。

(引用始め)
・・・このグループは、自分たちが集まり「北」の先進国と交渉を始める理由は「共通の歴史的境遇」にあるからと説明している。
 つまり、これらの国々のほとんどが1819世紀以来の植民地体制の下で列強に支配され、先進国に原燃料や食料を提供し、先進国の工業化を支え、その工業製品を輸入する国際分業体制の中心に置かれてきたのである。このような一方的な国際分業体制の下では、自国で工業は発達せず、輸出品に付加価値を付けることもできず、教育や科学技術を普及させることも無視され、もっぱら肉体労働で輸出を支えていた。この国際分業体制を通じて、北の国が資本を蓄積し、工業化を進め、今日の繁栄の基礎をつくることができたことには疑いの余地がないだろう。
 高所得国は温帯国、中低位所得国は熱帯・亜熱帯国というきれいな線引きの根拠はこの「歴史的境遇」に発するといえる。
(引用終わり)

なぜこの部分が該当箇所なのかといえば、「歴史的境遇」という言葉があるからである。柏陽受験生には説明不要だろう。
問題なのは、このように易しい問題をきっちり得点できることだ。
時間を短縮するために、また万が一の失点を防ぐために、「字数制限のある抜き出しはケツから(後ろから)数える」というテクニックを使うこと。
そして、1か所だけではなく、いくつか候補を挙げて、自力で選択問題にしてしまうことがコツだ。
すると、候補は「・・・に置かれてきた」で終わる部分と、「・・・で輸出を支えていた」になるだろう。前者は68字、後者は69字になる。
どちらが「歴史的境遇」の説明としてふさわしいかを考えたとき、歴史という語句に通ずる「植民地体制」という語句がある前者を選ぶのだ。

いよいよ最後。

(ウ)二重線部「貧困はつくられる」とあるが、「南の世界」が「貧困」を改善していくためにはどんな方策をすすめて、どのようになることが望ましいのか。下線部(2)以降に示される筆者の具体的な考え方を踏まえ、次の条件を満たし、80宇以上、100字以内で記述用紙に記入しなさい。
〔条件〕
  「南の世界は」(字数に含む)で書き始め、「科学技術」「工業化」「肉体労働」
  「付加価値」という四つの表現(用いたことが明らかになるようにその表現には
  下線をつけること。)をすべて用いること。

さあ、またまた条件のたくさんある記述です。「具体的に」はとっても大切な条件。今後も、「具体的に」とあったらしっかりマーキングしましょう。
ぶっちゃけて言えば、面倒ならば、また時間が足りないと感じたならば、すぐに次の問5(英語)をやるべき。
国語・小論文が得意で、準備をきちんとしていて、すぐに答えがわかりそうで、時間に余裕があって初めて取り組むべき問題です。
特色検査で満点を狙っちゃだめですよ。
さて、また該当箇所を引用します。

(引用始め)
 つまり、これらの国々のほとんどが1819世紀以来の植民地体制の下で列強に支配され、先進国に原燃料や食料を提供し、先進国の工業化を支え、その工業製品を輸入する国際分業体制の中心に置かれてきたのである。このような一方的な国際分業体制の下では、自国で工業は発達せず、輸出品に付加価値を付けることもできず、教育や科学技術を普及させることも無視され、もっぱら肉体労働で輸出を支えていた。この国際分業体制を通じて、北の国が資本を蓄積し、工業化を進め、今日の繁栄の基礎をつくることができたことには疑いの余地がないだろう。
 高所得国は温帯国、中低位所得国は熱帯・亜熱帯国というきれいな線引きの根拠はこの「歴史的境遇」に発するといえる。
(引用終わり)

前の(イ)と同じ部分になってしまいました。
ここから「具体的」な部分を探すと、
・・・自国で工業は発達せず、輸出品に付加価値を付けることもできず、教育や科学技術を普及させることも無視され、もっぱら肉体労働で輸出を支えていた」
ってところでいいですかね。納得できますか?
これを解答に仕上げるには、テクニック「反対にする」を使います。大学受験生には「逆・対偶を考える」と教えることがあります。
つまり、南の世界が不利に扱われてきた事実を、すべて克服すればいいわけです。
そのためには事実の逆を書けばいい。
→「南の世界は、肉体労働のみで輸出を支えることから脱するために、科学技術を普及させて工業化を推進し、輸出品に付加価値を付けていくために、教育を普及させることが必要である。」
でどうでしょうか?
模範解答はもう少し広い範囲をまとめていますが、これだけでもかなりの得点になると思います。ちょっと日本語として変なところもありますが。
何度も言うように、特色検査で、最初から満点を目指してはいけません。
15分かけて10点を狙うより、3分で5点、5分で8点を狙うのです。

思った以上に長くなってしまいましたので、今日はここまでにします。
次回は問5の英語を考えてみます。

つづく

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解説などに間違いがありましたら、どうかご指摘ください。



2015年10月13日火曜日

特色検査について②

特色検査について、続きです。
今日は、実際に問題を解いてみて、中3の目線から難易度などを考えてみます。


特色検査の内容には各高校で特色があるが、“小論文型”の緑ヶ丘高校を除けば、“思考型”と“知識型”に大別できます。
このあたりの分類は大手塾さんのサイトが丁寧に解説してくれているので、そちらをご覧ください。
気になるのは、
・どの程度のレベルなのか
・何点くらい取らなくてはならないのか
・どのように取り組めばよいのか
3点ではないでしょうか。
もちろん、高校によってレベルが異なるのでなんともいえない。
私立文系だが、河合塾偏差値が60を超える大学受験生が湘南高校の特色検査を解いたら、なんと20点(100点満点として)だったのだ! MARCHクラスに合格するだろう高3が、20点しか取れないのだ!
柏陽はここまで難しくはないが、それでもこのことを考えると、向き・不向きを考慮し、特別な対策をしなければ散々な結果になることもあるということをご理解ください。
そのようなわけで、柏陽の特色検査の問題を解きながら、実際に考えてみましょう!

例として、平成27年度の柏陽高校特色検査問題を取り上げます。
↓問題をご覧になりたい方はこちらからどうぞ↓

問1は折り紙の問題。
公立中高一貫校入試や国大附属中入試ではおなじみの問題。要は小学生でも解けるということだ。
この問題を克服できないとなると、高得点はかなり厳しいのではないか。
問題慣れをしたい場合は、公立中高一貫校入試や国大附属中入試問題から抜粋して解くとよいだろう。
具体的には、せっかく図が書いてあるのだから、図にいちいち書きこみながら考えるとよい。頭の中だけで解くと、思わぬ失点をするかもしれない。
いや、はっきり言おう。ここで失点をするようなら、柏陽はあきらめたほうがいい。
易しい問題をなめちゃいけません。
(ア)と(イ)を合わせて2分以内で、絶対に正解すべき問題である。

問2は上位蜃気楼について具体的に考えさせる問題。
パッと見は天気図の問題で、天気図についての基礎的な知識も必要だが、説明文や図・データの正確な読み取りや、論理的思考も必要となる良問。
(ア)は光の屈折の問題。資料1に図が載っているし、屈折の原則そのままだから、これ
が答えられなければアウト。
(イ)は図と資料と天気図の知識から、論理的に正誤を読み取る問題。決して難しくない
が、論理なので1問程度は落とす可能性が高いと思われる。
 ①観測地点で感じる風は弱い。
  →天気図より、等圧線の間隔が広いから○
②観測地点での風向きは、南からの風である。
  →説明文に「海風」とあるので、海から陸への風。富山湾の地形(資料Ⅱ)と合わせて考えると、少なくとも南風ではない。×
③早朝から気温が高く、一日を通しての気温が変わらない。
  →天気図からは、富山湾が温暖前線の勢力下にあるのか、高気圧の勢力下にあるのか
がわかりにくいが、説明文には「日中の陸地で温められた空気が、海面にある冷た
い空気の上に、海風によって流れ込み」とあることから、晴れた日であると考えら
れる。晴れた日は1日での気温の変動が大きい。論理の問題。×
④観測される時間は、早朝よりも昼ごろから夕方にかけてである。
 →説明文では「日中の陸地で温められた空気」とあるので、早朝に温められていると
は考えられない。論理の問題。○
(ウ)はこれまでの思考を踏まえ、上位蜃気楼が観測されやすい条件を25字以上35字以
内で説明する問題。満点は難しいと思われるので、半分取れればよしとしよう。
「季節的な特徴を踏まえること」「~こと。で終わること」「等圧線という語を用い
ること」という条件に加え、見落としがちなのが「天気図」という条件だ。
つまり、気象条件などを理屈で説明するのではなく、天気図の説明をしなければ点
が絶対条件なのだ。この条件を落とせば、せっかく書いても0点の可能性がある。
「季節的な特徴」については、季節が春ということは資料から明白なのだが、春の
天気図の特徴である「移動性高気圧」という語句が思い出せるかどうか。もし思い
出せなければ、「太平洋に高気圧がある状態で」とするしかないが、それで得点に
なるかどうかはわからない。
「等圧線」については、「等圧線の間隔が広い」と書かなくてはならないだろう。
「風が弱い」としてしまうと、天気図の説明としては疑問である。
よって、記述でもあるし、少々失点するだろう問題だった。

問3は社会の問題。
社会とはいえ、「新橋」や「山手線」を答えさせるあたり、一般常識が必要な問題。
しかしそれにしても、神奈川県の入試問題で東京の地理を問うとは・・・もし知らなければ得点できない。
(ア)は1865年当時の日本の最大の輸出品を問う問題。選択問題であり、紛らわしい選
択肢もないので、絶対に正解しなくてはならない問題。「生糸」
(イ)は地図から「新橋」を書かせる問題。日本最初の鉄道がどこからどこまでだった
か、たしかに教科書に載っているけどね。ドキッとした受験生もいたのでは。
(ウ)は地図から「山手線」を選択させる問題。選択肢に「東海道線」もあるのが憎い。
   そこは資料Ⅱと資料Ⅲを読み落とさないこと。説明にも「赤羽―品川間」と書いて
あるし、地図も山手線の路線図が載っている。
   それにしても、「山手線」の路線を知らないと正解できないんだが。
(エ)品川線ができた理由を10字以上20字以内で説明する問題。「輸出」を用いるのが
条件。
   模範解答は「輸出する生糸を横浜の港に運ぶため。」だが、資料の地図に「至前
橋」とか書いてある。ここから、前橋→群馬→富岡製糸場なんて連想すると、「北
関東で生産された生糸を輸出するために横浜に運ぶため」なんて書きたくなって20
字におさまらない。ここはぐっと我慢して、最低限必要な情報だけを書かなければ
ならないだろう。
それにしても、(ア)の解答である「生糸」をさらに記述で書かせるとは面妖な。
模範解答に「生糸」という語句が入っているが、「生糸」はキーワード(満点を取る
のに絶対に必要な語句)ではないのかもしれない。
たとえば、「北関東と、輸出港である横浜を結ぶため。」なんていう解答はどうだろ
う。結構スマートだと思うのだが。
 
問4は国語の問題・・・おっと、かなり長くなってしまいました。
この先は国語・英語と長文が続くので、ちょっと一休みしましょう。
国語・英語ともレベルは高いですよ~

それでは、つづきます。
解説などに間違いがありましたら、どうかご指摘ください。


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2015年10月8日木曜日

特色検査について➀

昨年度の高校入試対策は、一昨年度に引き続き、ほぼ予想通りの結果になりました。
“予想”と一口に言いましたが、そこに至るには、生徒たちには心の葛藤があり、塾としてはときに歯がゆさを感じることがあり・・・などというふうに、日々、人間同士がさんざん格闘したうえでの“予想”です。
これはどの塾でも同じだと思いますが。
ただ、特色検査対策と面接対策をしていて思うところがあり、またそれが“予想”に大きくかかわったので、ちょっとだけ考察してみようと思いました。

特色検査の対策をしたのは、柏陽高校と緑ヶ丘高校。まったくタイプの異なる2校だ。
柏陽高校の方がややレベルは高いと言われているが、内申:学力検査:面接:特色検査の比率は3:5:2:2で両校とも同じ。
柏陽と緑ヶ丘の大きな違いは、柏陽は学力検査(入試5科目)の英数国のうち高得点の2科目の点数が2倍になる(傾斜配点という)一方で、緑ヶ丘は傾斜配点がない点。
それと、特色検査の中身だ。
柏陽の特色検査は“科目横断型”だが、緑ヶ丘は“小論文型”だ。
これらの相違点は、デカい。決定的にデカい。
偏差値の1ポイントや2ポイントなんて、簡単にひっくり返ってしまうほどだ。

まず、傾斜配点について。
もし英数理が得意で、国社が苦手な中3がいたとする。もしも・・・、だよ。
彼は入試で、英語90点、数学90点、理科80点、社会70点、国語70点を取ったとする。あくまでも、もしも・・・です。詮索・特定しようとしないように。
緑ヶ丘を受験すればフラット配点だから、400点となる。
柏陽を受験すると英数国のうち高得点の2科目が2倍で700点満点になり、それを500点満点に圧縮するから、(90×290×2807070)÷700×500414点になる。
なんと14点もの差がつくのだ。
そして苦手科目の点数は7分の5に圧縮されるから、点数にばらつきがある場合は柏陽が有利だ。もしもそういう生徒がいたら・・・だ。

次に、特色検査について。
特色検査は100点満点だが、入試の得点としては200点満点に換算される。
学力検査の1科目は100点だから、その倍、つまり2科目分に相当するのである。
そして、内申と比較すれば、中3の内申点と同じ点数比率(200点満点に換算)なのである。
さあ、大事なことは繰り返し言います。
特色検査の点数と、中3内申の点数は、同じ比率です。
特色検査の点数は、学力検査(入試)の2科目分です。
いかに特色検査がデカいか・・・おわかりいただけましたか?
つまり、内申が低かろうが、不得意科目があろうが、特色検査ができればカバーしてくれるのだ。
どうしても苦手な科目があるのならば、また内申がどうしても取れないならば、それらを無理やり克服するのではなく、いっそ特色検査の対策を徹底的にやるのも手なのである。
そのようにして、柏陽に合格した子がいたとしたら・・・?
その子は、緑ヶ丘を受験していたら落ちていたかもしれない。
夏までは緑ヶ丘が第一志望だったのに、自分に有利であると判断して柏陽に変え、合格した。
そういう“予想”が的中した(もちろん紆余曲折魑魅魍魎あったが)ことで、やはり受験って作戦が大事なんだなあと思いました。
たとえば、あくまでも仮に、中1内申がオール4以下で、中2内申もやっとオール4。
小学校時代にはあまり勉強していなかった子が、中3になってからがんばって柏陽に入った。
もしそんな子がいたとしたら、その子をとても誇りに思うでしょう。
そのようなわけで、特色検査についてずいぶん考えさせられたのであります。



つづく
次回、特色検査の問題を解きます。

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