2018年2月28日水曜日

数学について その10



「式を立てない」について、話だけでは分かりにくかったと思うので、実際の中学入試問題を解いてみます。

問題1
「ある学校の今年の6年生の人数を調べたところ、昨年より男子が4%減り、女子が10%増えたため、全体では8人増えました。また、昨年の6年生の男子と女子の人数の比は5:4でした。今年の6年生の男子、女子の人数をそれぞれ求めなさい。」

典型問題です。
普通は問題を見た瞬間に数直線を2本描き、テクニカルに素早く解く問題です。
時間制限のある入試ではそれが正解ですが、それでは普通過ぎて面白くもなんともありません。
今回は図も式も書かずに解いてみましょう。
何が目的かと言えば、「解き方」を知ない問題に遭遇した場合(トップクラスの中学入試や大学入試ではよくあることです)、どのように対処するか、すべきなのか、です。

➀試行錯誤する前に、隠された条件を発見し、列挙するように努める。
・生徒の数は整数である。
・だから答えは整数である。
・去年の男子の数も整数。4%減った今年も、全部整数。
女子も同様。


・学校の生徒数だから、答えが5人とか10人とか100万人とかはないだろう。

答えが整数になるとわかっている場合、さほど大きな数でなければ(目安として200くらいまでであれば)、立式不要で答えだけがポーンと出てくることがあります。


②試行錯誤。ここからは自由な発想です。一つの方法に固執せず、いろいろな角度から眺め、アップとルーズを行き来できるような柔軟性を育てるのに、試行錯誤は最適です。

~頭の中 と メモ~
元の数も整数で、4%減っても整数になる数って、どんな数があるだろう?
4の倍数かな?
学校の生徒数だから、8とか12とかじゃないだろう。
100はどうかな?
100から4%減っても96だから、整数になるな。
もし去年の男子をが100人なら、今年の男子は96人だ。
それで、去年の男子と女子の比は5:4か。
すると去年の女子は? 80人か。
今年の女子は? 10%増えたると88人。
これもぴったり整数だ。
この場合だと去年の全体の人数は100人+80人=180人。
今年は96人+88人=184人。
何人増えてる? 4人増えているね。
問題では8人増えてるから、ちょうど倍だね。
去年の男子は200人。女子は160人。
今年の男子は192人。女子は176人。
5:4。
うん、合ってるな。
(解答終了)

・・・どうですか?
実は、子どもの中にも、新鮮な考え方に目を輝かせる子と、怪訝な顔をする子がいます。
現時点では、どちらの子が将来伸びるかは、わかりません。
ですが、私の考え方以外にも方法を探ろうとする子がいたり、「答は言わないで~」と夢中で考える子がいたりするのを目の当たりにするとき、やっぱり、数学って解法暗記だけではつまらないよなー、という感想だけは捨てきれません。
 
たしかに高校数学の数Ⅱや数Bでは解法を覚えることが必要になりますが、小学生の段階で解法を覚えることが、その後の数的思考に影響を及ぼすのではないか? という危惧は、私の中で拭えません(とはいえ私に数的思考が十分にある、とまでは申しません)
むしろ・・・勉強って辛いですが、辛い中にも一塊の光のような楽しみを見いだせない限り、学力が大きく伸びることはないと思うのですよ。
どういう思考方法をすれば数学が伸びるのかというデータは見たことがありませんが、私立トップ中学が見たこともない問題を入試で出したり、中等教育学校の入試に式でなく「考え方」を書かせたりという現状を鑑みれば、私の考え方もあながち間違ってはいないだろう、なんて思っています。
もちろん、たとえば大学院とかの数学の超人たちにとっての数学の話ではなく、あくまでも大学入試にむけて、ですけどね。


もう一つ、具体例を。

問題2
300gの肉を買おうとして、お釣りのないようにお金を持って買い物に出かけたところ、特売で25%引きの日でした。もともと持っていたお金で、何gの肉が買えますか。」

割合の立式は、機械的にやろうとしても難しいものがあります。特に小学生にとっては。
これもさきほどの「答は整数」であることを利用して、試行錯誤してみましょう。

➀試行錯誤する前に、隠された条件を発見し、列挙するように努める。
・値段は、ふつう整数である。
・「四捨五入して」とか「消費税」とは書いてないので、答えは整数であると予想する。
・25%引きになっているのだから、定価より安く買える。
・答えは25%引きをしても整数になる数を使う。
・でも求めるものは値段ではなく、グラム。
・肉は安くなっているんだから、300グラムより多く買えるはず。


②試行錯誤。ここからは自由な発想です。一つの方法だけでなく、いろいろな角度から眺めたりと、アップとルーズを行き来できるような柔軟性を育てるのに、試行錯誤は最適です。

~頭の中 と メモ~
「肉って普通いくらだ? 1パックで500円くらいか。
計算が面倒だから、100円にしよう。100グラムで100円にしよう。
じゃあいくら持って出たんだ?
300円な。300円で300グラム買える。
で、特売で肉はいくらだ?
そう、25%引きだから、75円。100グラムで75円。
で、いくら持ってるんだっけ? 300円だったな。
じゃあ、300円で、100グラム75円の肉が何グラム買える?
100グラム75円だから、200グラムで150円・・・
つーか、これって肉の値段は関係ないじゃん。何円でもいいんじゃん。
(さて、答えは?)




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2018年2月26日月曜日

数学について その9


数学については、旧ブログでも一部言及していました。
今回のお話の具体例として、一部を修正して引用します。
ご参考になれば幸です。

・数の大きさが分かる
ノートに「1」の大きさを10cmで書いたとき、下に順に2分の1、4分の1、5分の1、10分の1、20分の1などの大きさの直線を描くとする。
このときに、計算しなくても2分の1を5cm4分の1を2.5cmにできるかどうかは、量がわかっている一つの指針になります。
このことが無理な場合、定規で測らずに測らずにだいたいの大きさが描けることができれば、まだ大丈夫です。
しかし、今までの経験から、2分の1や4分の1が極端に大きすぎたり小さすぎたりする子は、ちょと対策を考えたほうがいいでしょう。
具体的にはケースによると思われますが、多くは「量」ではなく「数」でわかるように訓練するのがいいと思います。リンゴやミカンなどの個数や、一番いいのはお金だと思います。お金の問題ってよく出ますからね。ちょうどいいでしょう。
これに気付かない子は、計算で求める方法を教えてそれができるようになっても、どこかで行き詰まる可能性が高いと思います。
数直線を図示することは絵画的な才能が必要なのかもしれませんが、算数・数学とも関連があるように思えてなりません。
科学的なデータはありませんので、あくまでも経験として、です。


・分数を量として認識する
このことを発展させると、分数の足し算や引き算、かけ算や割り算も、計算方法を知らなくても求めることができる場合があります。
むしろ、簡単な分数計算なら(2分の1×2分の1や2分の1+3分の1など)は計算で求めないでほしいと思っています。
しかしこのことを教室で小中学生に言うと、半数位の子が「???何言ってんの???」という顔をします。
それだけ、計算は筆算で丁寧にやるもの、という神話が浸透しているんですね。
2分の1×2分の1や2分の1+3分の1などは、半分の半分という概念の理解や、頭の中で図や数直線を思い描けばできるものなのです。
そういう概念や思考ができた上で先へ進むのと、計算方法のみ覚えて机上の紙の上だけで答えを出し続けるのとでは、先々で差が生じてしまうのは仕方のないことではないでしょうか。
私が今回の記事で言いたかったことが、ここに集約されているとまで言えます。

私は、(受け売りですが・・・)、そもそも計算とは実際に数を原始的に数えたり測ったりして、そこからある規則を見つけ、「こうした方が便利だ!」と誰かが気づいて、計算法則などが発見された、と認識しています。
だから子どもには、まず数えたり測ったり描いたりして「量」を知ってもらい、それから「便利な方法」として式や解き方を教えたい。

はじめに式があるのではなく、便利だから式を立てる。
そういうふうに思ってもらえれば幸いです。

相変わらず、私立の小学校や、また中学入試でも、解答に「式」を要求する学校はあります。
一方で、「式」は要求せず「考え方」を書くように要求する学校も増えてきました。
もちろん、私は後者に賛成です。
「考え方」は、図や日本語のみで算数数学を説明してもいいからです。
もちろん中学以降は式と日本語で正しく説明できなければなりませんが、ここまで読んでいただければ、中学入学以前までの間は、「式」は必須ではないと言えることがお分かりいただけると思います。


・答えの妥当性を知る

しつこいですが、答えの妥当性は大切です。

2分の13分の2を足したら答えは1より大きくなる。
何かを8で割ったらあまりは8より小さい。
何かを0.4で割ったらあまりは5とかにはならない。
何かを0.4で割ったら、答えは元の数より大きくなる
何かに0.4をかけたら、答えは元の数より小さくなる。
2割引きしたら売値は定価より安くなる。
車の速さを求める問題で時速4000kmになったら、どこかで間違えている。
4%の食塩水と10%の食塩水を混ぜたのに、答えが12%になった。おかしい。

などは当然分かるべきだし、わかるよう努力すべきです。
いや、むしろわかると楽しくなると思うし、成績も伸びると思います。
ミスに気付くようになるし、答えが予想できることによって方針や式を立てられることが多くなります。


それでは、次回は旧ブログにも掲載した中学入試問題を実際に解いてみます。


つづく

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2018年2月21日水曜日

数学について その8


またひとつ、数学を使う上で重要な能力があります。
それは、「答えを予測する」能力です。
問題文中の数字より答えが大きくなるか小さくなるか?
答えが整数になるか分数になるか?
答えは1つか複数か?
などは、問題を解く前に、または問題を解きながら予測するものです。
そして答えを出した後にも、その出した答えが正しいのかどうかを検討するものです。

いくつか例を考えていたら、ありがたいホームページを見つけました。
計算問題なのですが、その答えが4択なのです。
無断ですが、ほんの少し拝借させていただきます。

例題1   36.4 25.125 =

17.15  ②10.219  ③11.275  ④1.12


お分かりになりますか?
これは、実際に計算することは不要です。
答えが小数第三位までの数になり、小数第三位の数字が5であることが分かれば、一発で答えが選べます。
解答:③


同様な問題をもう1題

問題1   269.9 + 71 + 43.5

56.35  ②2793.45  ③248.7  ④384.4

解答はいちばん最後に。


 
では次です。

例題2   156÷4

390  ②500  ③50  ④39


こちらは、まず1より大きい数で割ったら、答えは元の数より大きくなることを知っていれば➀と②は違うことがわかります。
次に、50×4200であることが分かれば③は切れるし、または割られる数の下一桁が6であることから、9×436でちょうど下一桁が6になるため③を切って④を選ぶことができます。


同様な考え方で次をやってみましょう。

問題2  5730÷30

191  ②202  ③2012  ④5841


解答はいちばん最後に。



では、次です。

例題3   78×32×19

732  ②72512  ③7424  ④47424


これは少し難しいかもしれません。

78×32×19=を80×30×20=と概数で考えてしまう方法はどうでしょう?
そして8×3×224×252を出し、0を三つかけたので000をくっつけて、
52000という数を出します。この近似値が答えになるはずです。
別解として、答えの下一桁を考えるのもアリですね。
答えの下一桁の数字は、8×2×972×2で、4となります。
そもそも、選択肢の桁数がすべて異なるので、一発かもしれません


それでは類似問題です。

問題3  74×31

229  ②2294  ③22944  ④1694



さて、いかがだったでしょうか。
他にも考えさせられる問題はたくさんあったので、興味のある方はホームページを訪れてみてください。(http://www.lojim.jp/calculation/quiz.cgi)無断リンクすみません。

もちろん、これらがすべてではありませんし、逆に、考え方をパターン化して覚えてしまうのではあまり意味がありません。

数学はそもそも、有限個のものをすべて数えるのが面倒くさいために発達した、と私は考えています。
もしこの世に九九がなければ、たとえば6×9なら6を9回足さなくてはなりません。
それが面倒くさいから、誰かが九九を発明したのです。

そう考えれば、数学は、もともと数えるのが基本だと言えるでしょう。
解法や手法や公式は、その面倒くささを和らげるものでしかありません。
数学は決して、公式を暗記して運用できるから終わり、ではないのです。
その証拠?に、難関大学の数学では必ずと言っていいほど「まず数えさせる」問題が出題されます。

ですから、解法の暗記や機械的作業は、数学ができるようになるための最大の阻害要因である、と言えなくないでしょうか?
とくに私立の小学校や中学受験塾で公式・解法・立式を重視しすぎるきらいは、疑問視どころか憂慮すべきであると考えるのです。

その点、非常に参考になる記事がありましたので、無断でリンクします(ごめんなさい)。 
http://kosotatu.jp/study/%E3%80%90%E7%89%B9%E5%88%A5%E8%AC%9B%E7%BE%A9%E3%80%91%E6%95%B0%E5%AD%A6%E3%81%8C%E5%BE%97%E6%84%8F%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%8B%89%E5%BC%B7%E6%B3%95%EF%BC%81/




数学の関門その3「答えを予測できること」




最後に、問題の解答です。
問題1:④(小数第一位の数字さえ考えれば)
問題2:➀(答えが割られる数より小さくなり、下一桁の数字が1になることさえ確認できれば)
問題3:②(下一桁の数字は4、近似値の70×302100になるので、選択肢の桁数で)



つづく


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